わが青春のマリアンヌ

「わが青春のマリアンヌ」、マリアンヌ・ホルト、イザベル・ピア、ピエール・ヴァネックほか出演、ジリアン・デュヴィヴィエ監督、フランス、西ドイツ、1955

この映画、子供の頃に見た記憶がうっすらとあるのだが、ストーリー部分はまったく覚えていない。1シーンだけ、イザベル・ピアが「鹿に踏み殺される」ところだけが記憶の底に。しかしもちろん美少女が実際に鹿に踏み殺される場面があるわけではなく、鹿がたくさん走っている場面があるだけである。この映画を覚えているのは母親がとても気に入っていたからなのだが、今見ると非常に納得。要は、完全に少女趣味にかなった映画である。今ならBLネタにされるところだが、もちろん昔そんなものはないので、いちおう女性への淡い憧れみたいなことで片付けられている。

フランス語版とドイツ語版が並行して製作されたらしいが、わたしが見たのはフランス語版。ドイツ語版は、女の子二人以外のキャストはみな差し替えられているそうだ。自分としてはピエール・ヴァネックはやや頬骨が張っているので、ドイツ語版ではもっと美青年を期待したい。

話は、寄宿学校にアルゼンチンから転校してきたピエール・ヴァネック(ヴァンサン)が、湖の向こうにある古城を探検するとそこに謎の美少女がいて、「助けて」と言われ、調子に乗っていると、そのうち古城の主人が出てきて、「あれは結婚話がつぶれた後、精神病にかかってしまってるので、あきらめてくれ」と真相を明かされ、しおしおと撤退、というもの。フランスかスイスあたりの、森の中の寄宿学校、湖のほとりの古城、謎の美少女、ヴァンサンに嫉妬する校長の親戚の美少女、鹿の群れほか、とにかくロマンティックな要素がてんこ盛り。ロケとスタジオ収録をうまく組み合わせて、どことも知れぬ風景を上手に映している。美少女二人は存在感たっぷり。寄宿学校の青少年は、ひたすら愛を求める純粋なのばっかり。まあそういうところが昔の人の趣味にかなったのだろう。今ではなかなか撮れない映画。