BU・SU

「BU・SU」、富田靖子大楠道代ほか出演、市川準監督、東宝映画、日本テレビ、1987

市川準の追悼特集で3月にかかっていた映画。今頃録画分を見ているが・・・。どうせ昔の映画なので、いつ見ても別に問題は無し。

富田靖子は田舎から東京に出てきて、置屋をやっている叔母の大楠道代のところに部屋を借り、芸者の修行をしながら高校に通っている。田舎にも母親にもよい思い出はないらしく、高校でも回りには打ち解けない。少しなかよくしているのは先輩芸者の伊藤かずえくらい。富田靖子は、暗い顔をしてほんとうにブサイクに撮られている。

それがひょんなきっかけで文化祭の演し物として、「八百屋お七」の人形振りを踊らされることになる。最初はイヤイヤだった富田靖子は、途中からいきなりやる気を出して懸命に練習を。そして当日、火の見櫓で半鐘をたたくクライマックスの手前、セットが壊れて富田靖子ははしごから転げ落ち、客は大笑い。ここの場面は富田の踊りの決まり方、あと一歩のところで奈落の底という演出がよく決まっている。

その後、舞台の下で落ち込んでいる富田靖子は、慕っている高嶋政宏に手をひかれて、ストーム用の櫓に火を投じる。ここの富田靖子だけがきれいに撮られていて、内面の変化を印象づけるようにつくられている。最後のエンドロールに映っている富田靖子はひたすらかわいい。

まあ富田靖子をどう撮るか、の判じ物のような映画だが、その目的はきちんと達成されている。なにしろアイドルとしての絶頂期だったころの映画でこういうものを撮ってもらっているのだから、女優冥利につきるだろう。わたしは今の年相応に老けた富田靖子も好きなのだが、それもアイドル時代の輝きと今の落差がいいのである。願わくば、これからも地味に年齢を積んでいってほしいと思う。