天衣紛上野初花~河内山

「天衣紛上野初花~河内山」、中村吉右衛門市川染五郎中村芝雀中村錦之助澤村由次郎中村歌六市川左團次ほか出演、NHK教育「芸術劇場」、2009.5.29

「芸術劇場」の後半、2008.9.25の歌舞伎座の舞台。「河内山」は映画とテレビドラマでしか見たことがなく、歌舞伎の舞台ははじめて見た。まあもともとワルの河内山が、大名に娘を取られた上州屋から二百両をふんだくり、寛永寺の僧に化けては松江伊豆守(染五郎)に一杯食わせる話。

吉右衛門は台詞も所作も堂々と決まっていて、大悪人の品格十分。正体がばれると開き直って「河内山は直参、たかが国主大名の裁許を受けるいわれはねぇ」と啖呵を切って、のしのしと退場。直参といったって、所詮茶坊主なのだから「たかが国主」はないだろうと思うが、大悪人は何を言ってもかまわないのである。最後は舞台からの引き際に、後ろを振り返って「ば~か~めぇ~」の一言。伊豆守の家来どもは歯がみするが、お家大事、殿中のことゆえ何もできずに悔しがるばかり。このあたりが最高に気持ちいいのである。

河内山といえば勝新と思っていたが、もとはこうだったんですね。たしかにこの悪人は貫禄ある名優、しかも愛嬌のある人にしか務まらない。さすがは吉右衛門。いいもの見せていただきました。