天と地と

天と地と」第50話「川中島の章 その四」、石坂浩二高橋幸治ほか出演、NHK、1969

大河ドラマアーカイブスのつづき。この「天と地と」、子どもの頃、親の実家に番宣用の写真絵はがきがあったのは覚えているのだが、当然本編は見ていない。このシリーズから大河ドラマはカラー放送になっている。ビデオはそれほどよい保存状態ではないが、初期の作品の、見るのがつらい状態からはだいぶ改善されていて、それほど問題はなし。

それにしても全52話なのに、50話で川中島の合戦をやってるということは、ほぼ川中島で話は終わっているということになる(謙信改名の前なので、劇中でも政虎になっている)。ということは、このシリーズは謙信の前半生を描いて終わりということになる。うーん。

しかし謙信役の石坂浩二と、信玄役の高橋幸治は威厳十分。上杉謙信と言えば石坂浩二というのも、これを見れば納得。謙信は特に、精悍さでぬきんでている感じ。頭巾姿も決まっている。また戦闘シーンはかなりお金をかけて作っていて、けっこうな迫力。解説のパートで300人くらいを動員したと言っている。空撮もあり。お約束の、謙信と信玄の一騎打ちの場面も「実話」ということで作ってある。そして、なぜか有馬稲子が上杉方の女武者として登場。原作を読んでいないので、脈絡がわからないが、武田信繁を追い詰めて自刎させた後で、武田方の武士にあっさり殺されている。しかし、武田信繁浜畑賢吉)が短刀で頸動脈を切った後で、まだベラベラしゃべってるのはちょっとどうよ。

戦いは痛み分けということになっているが、一応謙信主役のドラマだから、謙信は「勝ったぞ」といっている。しかし樫山文枝(謙信の「心の恋人」みたいな役)に死なれてしまって、けっこう涙目。こういうことをやっていながら、話が甘く流れていかないところは、演出、音楽(富田勲)、配役、それに脚本(クレジットでは杉山義法だが、複数で執筆しているようだ)のおかげ。「天地人」とか、あまりにあほらしくて見ているのがつらい。大河ドラマはちゃんと重たく作ってくれないと、と思うが、そういうのはもうはやらないのかなあ。