ちっちゃなエイヨルフ

「ちっちゃなエイヨルフ」、勝村政信とよた真帆ほか出演、イプセン作、タニノクロウ演出、アウルスポット、2009.2.13

NHK教育「芸術劇場」での放送。昔、「小さいエヨルフ」の訳で読んだ記憶が。しかし中身は記憶からまるっきり飛んでいた。舞台を見るのははじめて。

片脚の悪い子どものいる夫婦。夫の妹、妹に気がある男のおはなし。夫婦はケンカしながらそれなりにやっているように思えたが、「鼠ばあさん」が出てきてまもなく、子どもは水に溺れて死んでしまい・・・その後は四人の性格の中身があからさまになってくる、というもの。

やっぱりつらいときに人間性は一番露骨に出るもの。勝村ととよたのやり取りは見ている方がつらくなる。かなりえぐいお話だが、集中を切らさずに見ていられるのは、役者の力もあるが、細かい演出(子どもが死んだときに、勝村が流れる水に手をひたしているところとか、芸が細かい)が行き届いていることもあると思う。終わりのところは、地域の貧しい子どもを一緒に育てていこうというような話になるのだが、そこはいかにもウソっぽく見えるような演出になっている。まあそれはそうでしょう。こんなにウソで塗り固められてた人たちの心がそんなに簡単にキレイになるわけないでしょ。いろんな意味で見応えはあった。

演出のタニノクロウは、番組のはじめのところでちょっと紹介されていたが舞台は初めて見た。細かいところが煮詰まった緻密な舞台。機会があったらぜひ見に行きたい人。あと、勝村ととよた以外には馬渕英俚可が上手い。それから鼠ばあさん役の、マメ山田という女優さん、ほんとに全身から気味悪さが漂ってくるような感じ。この人の存在感はちょっとすごいと思う。