ある機関助士

「ある機関助士」、土本典昭監督、岩波映画、1963

日本映画専門チャンネル岩波映画特集でかかっていたもの。土本典昭の実質的なデビュー作だそう。確かにこの迫力と緊張感は、土本のような職人の技の賜物だろう。まだ電化されていなかった頃の常磐線を走る蒸気機関車。ダイヤの厳守と安全運行のはざまでの機関助士の厳しい日々が描かれる。事故防止訓練での全力疾走、遅れを縮めるための必死の石炭投入、そういう機関助士の仕事の積み重ねが鉄道運行の安全につながっていることが、強いメッセージになっている。

三河島事故の後で、国鉄が列車の安全性をPRするために企画した映画だというが、安全だと直接言わないで安全性のメッセージを伝える、という点でも作り方はうまい。また、忘れてならないのは、蒸気機関車の圧倒的な存在感。鉄道映画の醍醐味を満喫できる佳作。