ワルキューレ

ワーグナーワルキューレ」、エンドリック・ヴォトリッヒ(ジークムント)、ユッカ・ラジライネン(ヴォータン)、マルティーナ・セラフィン(ジークリンデ)、ユディット・ネーメット(ブリュンヒルデ)、ダン・エッティンガー指揮、東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場、2009.4.3

新国立劇場の「指環」公演、ワルキューレの初日。なにはともあれ、行けてよかった。ぎりぎりまで予定が決まらなかったものをヤフオクでチケットを落としてやっと行けたのだ。もっとも4階席だったけど、チケットが手に入っただけでありがたい。

この新国立劇場の「指環」は、この制作版では2回目とのことだが、演出がとにかくおもしろい。第1幕は、最初に、ヴォータンが、客席を背にして一人たっていてびっくり。前奏曲が終わるところで舞台から降りていく。舞台は、人の背丈ほどある巨大な食卓をはさんで、これも巨大な椅子がふたつ。舞台下手にフンディングとジークリンデの巨大な結婚写真がおいてある。剣をトネリコから引き抜くところは、剣がびよーんと上から下りてくるしかけ。

第3幕は、病院っぽいところに9つの個室があって、そこからワルキューレたちがベッドに勇者の死体を載せて、引きずり出してくる。盾は赤十字のマークをでかくしたようなもの。第2場に移るところで、舞台がびよーんと転換して、上から巨大なグラーネの書き割り(ポスターにのっていた木馬は、これだった)が降りてくる。ブリュンヒルデを眠らせたところで、上から板が降りてきて舞台をふさいでしまう。炎の場面はどうするのかと思ったら、その板に映像でヴォータンの最後のセリフが炎が燃えているようにして字幕で映されるのである。そしていきなり板が上がったら、そこには巨大なベッドがあって、ブリュンヒルデが眠っている。なるほどと思っていたら、いきなりベッドの周囲に本物の炎が燃え上がってびっくりした。トリッキーといえばそれまでだけど、舞台で炎を使うのはたいへんだから、よくやったねーという感じ。他にもいろいろ工夫があって、見ていておもしろかった。

歌手の出来は、ジークリンデのマルティナ・セラフィンが一番。いままでライブで聴いたジークリンデの中でも一番よかった。ジークムントはイケメン。このくらいかっこよくないと人妻をさらう場面は格好がつかないね。ヴォータンは声はちゃんと出ていた。ブリュンヒルデはまあまあ。ワルキューレたち(これは全部日本人)はあんまりうまくない。オーケストラは、ちょっとアンサンブルが乱れていたが、まあよしとしましょう。

今回の舞台を見て、「ラインの黄金」に行けなかったことがくやしくてしかたがない。次の「ジークフリート」「神々のたそがれ」は、また来年の春にかかるそうなので、きっと行かねば。

ただし安いチケットで4階席に座ることには、それなりにありがたくないこともある。前に座っているおじさん、あなたはどうして、頭をふらふらさせたり、やたら前にかがんだりするの。そういうことをされるたびに後ろのわたしは舞台が見えなくなります。特に舞台の前のほうに歌手がいるときにそういうことをされるとぜんぜん見えません。4階席1列21番に座ってたあなたのことです。後ろの人の観劇の邪魔になるから、前かがみの姿勢にならないでという注意書きが入ってたでしょ。いい年をした大人なんだから勘弁してください…。