愛と修羅

「愛と修羅」、奈良岡朋子吉田日出子、観世静夫ほか出演、水尾比呂志作、沖野暸演出、NHK名作ラジオドラマ劇場、2009.2.28

初放送は1967年3月22日となっている。放送は最初からFMでされたらしい。1967年3月22日は水曜日だから、いまとは編成も違ったのだろう。

話は、六条御息所のおはなし。来てくれなくなった源氏への嫉妬から、車争い、葵上の出産と死あたりまでの六条の心境が、奈良岡朋子のほぼ一人語りで描写される。六条の娘役で、吉田日出子が出てくるのだが、これが六条の執着心を煽りまくっている。奈良岡朋子は、ほとんど存在自体が生霊化してる・・・。まあこれは源氏じゃなくても、どん引きである。自分では抑えようとしても、嫉妬の心が「あくがれ出づる」ところは、「業」ですね。名演と言えるが、半分ホラーな感じである。しかし、ホラーっぽく作っているからホラーに聞こえるのではなくて、もともと六条の愛というか、人の愛情自体がホラーだということを表現しただけだろう。聞いていて、六条の成仏を願わないではいられない(このドラマの中では死んでないが)。

考えてみれば奈良岡朋子は存命でかつ現役である。先週の加藤武もそうだが、長く続けられる役者はほんとにえらいなあと思う。