トラ・トラ・トラ!

トラ・トラ・トラ!」、マーティン・バルサム山村聰ほか出演、リチャード・フライシャー舛田利雄深作欣二監督、日本、アメリカ、1970

これも久しぶりに見た。「ムービープラス」での放送。アメリカ公開版ではなく、日本公開版の方である。渥美清の日付変更線のやりとりを見られてよかった。

今見てみると、戦闘シーンよりも、真珠湾攻撃に至る日米双方のかけひき、特に日本側の作戦立案とアメリカの情報処理の過程に比重がかかっていて、ここが見どころになっている。結末はわかっているのに、緊張感がぐんぐん盛り上がっていくところはさすが、アメリカ側の脚本チームと小国英雄菊島隆三、そして黒澤明の脚本の力である。日米双方の役者の台詞にムダがない。とりわけ、山本五十六である。山村聰は米内光政とかいろいろやっているが、この役が一番はまっているのではないだろうか。三船のものもよかったが、それと双璧の出来。他のキャスト、特に南雲忠一の「若い者はいい」のところ、淵田美津雄の磊落な関西弁がかっこいい。

肝心の飛行機と艦も、結局この映画のフィルムがこの後も使い回されたことを納得させられる出来。暁の空に艦載機が発進する場面はほれぼれするほど美しい。しかも実写では、もはやこれ以上のものは作れないのである。発進シーンだって、本物の空母が使えなければ撮れないのだ。それに例のB-17の着陸の場面。貴重な実機をつぶして撮っているのである。日本だけの製作だったら、全部ミニチュアの特撮のみになったはず。それだけを考えても宝石のように貴重な映画だ。そして実物大セットやミニチュアの部分も手抜きなし。

製作後40年近くたっても、完全に現役のおもしろさ。製作にかかわった人たち全員にただ感謝。