アウトローの近代史

アウトローの近代史』礫川全次平凡社新書、2008

著者は在野の歴史家。中世における悪党、海賊から説き起こし、国定忠治清水次郎長らから赤報隊事件(維新期のほう)、自由民権運動との関係、三多摩壮士、鶴見騒擾事件闇市などいろいろな問題とアウトロー(著者はやくざ、侠客、博徒などのさまざまなアウトローを一括して論じている)との関わりを明らかにしようとしている。
赤報隊事件自由民権運動(特に秩父事件)とアウトローの関係についての新解釈はおもしろい。鶴見騒擾事件や戦前のスリ団と警察の関係についてはまったく知らなかったので、その部分は勉強になった。
しかし、権力とアウトローの関係についての著者の結論はちょっと浅いと思う。アウトローと権力の複雑な関係がどこから来ているのかということへの慎重な考察を抜きにして、「アウトローに必要なのは権力への批判精神と弱者への任侠精神だ」などといっても、それでは著者自身が批判する、講談や芝居の国定忠治清水次郎長の位置づけから一歩も出ていないのではないか。