妖僧

「妖僧」、市川雷蔵、藤由紀子主演、衣笠貞之助監督、大映、1963

道鏡のおはなし。道鏡は修験者だったということになっていて、最後まで剃髪した法体にならない。おまけにおはなしが、「実は道鏡は正義の人だった」ということにされていて、藤原氏の不正を糾弾して政治改革をやろうとした、女帝(藤由紀子)との関係は、女帝のほうから誘ってきた、阿部君麻呂姉弟道鏡の讒言などしていない、なんてことになっているので、戦前に道鏡のことを教えられた人はこれを見て目を白黒させたことだろう。
悪役の藤原氏だが、城健三郎が恵美押勝小沢栄太郎が藤原清川など。恵美押勝の刺客が乱を起こす前に道鏡を襲ってくるのだが、刀が背から腹に刺し通っているのに、道鏡は何事もなかったようにぴんぴんしている。法力というのはべんりだなあ。しかし法力も女帝の命を伸ばすことはできなかったようで、女帝が死んでしまうと藤原清川らが押しかけてきて、道鏡をめった刺し。今度は法力もなくなっちゃってたらしく、アウト。しかし自邸でめった刺しにされたのに、女帝の遺体が安置されているところまで這っていって、「わたくしもご一緒いたします」と絶命。なんだかねぇ。
個々のエピソードはともかく、話の流れにメリハリがなく、映画としてはあんまり面白くない。しかし市川雷蔵はさすがに存在感強烈。道鏡といえば肥満体を想像していたが、市川雷蔵が「俺が道鏡だ」で押し通してしまえば、なんとなくそれで納得させられてしまうのはさすがというべきか。