ニュースで見る昭和「昭和30年~昭和32年」

「ニュースで見る昭和『昭和30年~昭和32年』」、日本映画新社

時間の都合で、一番早いニュースを最後に見ることになった。「大ニュース」ではないネタが多くて、全部の中でこの時期のものが一番おもしろい。集団就職のニュースで、奄美から埼玉の紡績工場、九州の炭鉱地帯から大阪の美容院へ中卒者が就職していくのだが、美容院への就職者はそれぞれの美容院の店主が直接引き取っていく。つまり美容学校に通ってから就職先を探すというシステムはこの時期まだなかったということ。いつごろから学校システムになったのだろうか。
戦後十年ということで回顧編が組まれている。最初に靖国神社が出てくるが、当然参拝に対する議論などはない。巣鴨を仮釈放になった嶋田繁太郎大将が参拝に出向いている。これにも批判めいたコメントはなし。その後は戦時中、戦後まもない時期の厳しい生活のニュースに続き、復興した東京が映り、自衛隊の増強、米軍横田基地の拡張、東西和解を訴える平和運動のニュースで締めくくる。この項目だけなら現在の「左派」の立場からの編集のようにも思えるが、そうなっていない。自衛隊の増強については価値付与的なコメントはなし。米軍基地の増強については「日本の防衛を自主的に解決する方法はまだ解決されていません」というコメントで、いずれ安保条約を廃棄して自主防衛を支持するとも取れるような内容。最後の平和運動の紹介も、東西和解を訴えるような内容で、自衛隊の増強に批判的な立場から取り上げられているわけではない。後で、砂川基地反対運動のニュースも取り上げられているが、これもどちらかに肩入れしたようなコメントは避けられている。1955年時点では「保守─革新」の対立軸はやはり固まっていないようだ。
しかし一番笑えたのは中曽根康弘作詞「憲法改正の歌」。うたごえ運動に乗っかってつくられたらしいのだが、ちょっと悲壮な感じで軍歌調。「平和民主の名を借りて占領憲法強制し」というサビの部分がなんとも言えずおかしい。いま全曲の録音があったらかなりお宝かもしれない。