右翼・行動の論理

猪野健治編、衛藤豊久、野村秋介、阿形充規、蜷川正大『右翼・行動の論理』、ちくま文庫、2006

もともと猪野、衛藤、野村の三人の鼎談を『行動右翼入門』と題して1988年に刊行したものに、阿形、蜷川(両人とも野村の弟子)との鼎談を一章分つけくわえ、改題して刊行したもの。

しかしタイトルは原題の『行動右翼入門』のほうが内容に即している。なぜなら、この本での右翼の発言のどこにも「論理」というようなものがないから。天皇への帰依ということを繰り返しいうのだが、その天皇を彼らがどう捉えているのかがわからない。三島由紀夫のような日本文化を一身に体現すべき生ける精神のようなものと考えているのか、象徴天皇制の下での天皇は容認するのか、個別の人格においての昭和天皇や現天皇はどうなのか、といった肝心なことがあいまいにされたままで、ただ「天皇」といわれても何を考えているのかよくわからない。

それでいてことあるごとに「肉体言語」(直接行動)というものを持ち出すものだから、これでは愚連隊と変わらない。あたかも本人たちが「何でもいいからとにかく行動」と考えているかのようだ。だから「行動右翼」だということなのかもしれないが。

ただし、右翼人脈につながる人々の名前が頻繁に出てきて、それらに編者による丁寧な注釈がつけられているので、右翼運動の広がりを理解するためには役に立つ。