クイーン

「クイーン」、ヘレン・ミレン主演、スティーブン・フリアーズ監督、イギリス、フランス、イタリア製作、2006

ダイアナ妃事故から一週間、葬儀にいたるまでのエリザベス女王を中心とする英王室の人々のお話。ダイアナ妃をすでに王室とは関係ない個人のこととしてすませようとした王室も、世論の圧倒的な圧力の前に結局敗北させられる。女王役のヘレン・ミレンは非常にうまい。高貴さと尊大さ、伝統と自分の人生に裏付けられたプライドと自信、感情を表に出さない訓練された人格、怒りや愛情などの人間的な面、いろんな形で女王のキャラクターを立体的に表現できている。ブレア首相の女王に対する態度も興味深い。
しかし、いくらフィクションとはいえ、ここまで赤裸々に一家の内情を描かれてしまうイギリス王室には同情する。日本ではいくら雅子妃スキャンダルがあっても、こういう映画は絶対につくられない。大衆社会に放り出された君主制の複雑な位置づけをあらためて考えさせられる作品。