アメリカ外交

村田晃嗣アメリカ外交』、講談社現代新書、2005

アメリカ外交の歴史と現状について、第二次大戦後の歴史的変化を中心にまとめた本。最初の章でアメリカ外交全体についての著者の認識枠組みがはっきり示されていて、単なる事実の羅列ではない本になっている。

著者の見方では、アメリカ外交はある枠組みの中ではあるが相当なブレを繰り返してきたのであり、そのブレの一局面だけをとって、一極化とか帝国とかというレッテル貼りをすることは賢明でないという。アメリカ「帝国」化についての議論が広がっている中でこういう主張を日本ではっきりいうのは少数だとは思うが、それなりに説得力のある主張にはなっている。もっとも個々のパラメータの評価については議論があるだろう。全体として、著者はアメリカ外交をバランスの取れた視点で見ることに意を注いでいて、アメリカ外交に限らず、外交、国際関係一般に通じるいい意味での「中庸」を示している。巻末の文献紹介も親切。