進め独立旗

「進め独立旗」、長谷川一夫入江たか子ほか出演、衣笠貞之助監督、東宝映画、1943


戦争なので、ここらで大東亜の理念でも宣伝してやるわ!という映画。インド独立運動の話なのだが…。

インド独立といっても、在日インド人が日本でやりましょうというもの。だから主役はインド人で、それを妨害する悪者がイギリス大使館のイギリス人。のはずだが、キャストは全部日本人。エキストラだとインド人っぽく見える人が何人か出ているが、それだけ。

長谷川一夫にドーランを塗ったところで、インド人に見えるわけはない。ただの色黒の日本人である。ほかの「インド人」も、日本人っぽい顔で普通に日本語話しているし。「イギリス人」も同じ。ここはもうちょっとがんばろうよ。脚本工夫するとか、何か方法はあるんじゃないの?

イギリスのしていることはめちゃくちゃで、日本なのに、独立運動をしようとしているインド人は適当に拉致して、殺しちゃえというもの。インド人もおかしいと思ったら、日本の警察に連絡しないのはなぜ?イギリス人はアホすぎて、ぜんぜん悪人に見えない。

冒頭から、「敵!英国は印度を本拠として、東亜に悪逆の歴史を繰り展げてゐるのだ 見よ!その一挿話を」という字幕。長谷川一夫は、インドのなんちゃら王国の王子様。インド独立運動といっても、インド人クラブで独立についておしゃべりしたり、集会で演説したり、国際会議に代表を送ろうと相談するというかわいいもの。

インド人クラブにもイギリスのスパイがいるので、情報は筒抜け。長谷川一夫も結局イギリス大使館に拉致されてやられちゃう。これでインド人も怒って、「反英武装闘争だ!」という話になり、インド独立軍が結成されて(ここはニュース映画)ばんざーいという結末。

ストーリーはあってないのと同じ。監督は衣笠貞之助だが、まったくやる気は感じられない。いくらなんでもこれでは、インド独立運動への共感などぜんぜんわいてこない。