関西のレトロ銭湯

松本康治(町田忍監修)『関西のレトロ銭湯』、戎光祥出版、2009


貴重な関西地域の古い銭湯の記録。図版豊富。ほぼ全ページに写真があるので、実質、写真集みたいなもの。写真だけではなく、文章もついているし、何より、著者が「銭湯はどこを見るべきか」をよくわかっているので、外観だけでなく、脱衣ロッカー、彩色タイル、ペンキ絵、番台、などなど、細かいところを撮影している。

この本の価値は、「関西の」というタイトルが本物であること。つまり、大阪、京都のような銭湯がたくさんあって行きやすいところだけが掲載されているのではない。大阪でも堺東や泉佐野のようなちょっと離れたところ、京都では舞鶴や福知山、滋賀は彦根や水口石橋、兵庫、奈良、和歌山などの行きにくいところがたくさん載っている。

掲載されている銭湯は、一見して、非常に古く、昭和30年代に出来たところは新しい方。明治34年とか大正12年とか、昭和3年とか、えらい年代に出来た銭湯がゴロゴロある。自分の狭い見聞の範囲でも、これは本当に古い銭湯だとすぐにわかるところが厳選されている。

銭湯がどれだけ古くて、建築や造作に価値があるかは、行ってみないとわからないことが多いので、著者は、この本に掲載されている以外の銭湯にもまめに足を運んでいるということ。電車の便が悪いところも多く、しかも外観を撮影するためには昼間に訪問しなければならない。銭湯は16時開店というようなところが多いので、日の出ているうちに訪問というのは制約が大きいのだ。

この本に掲載されている銭湯、出版は2009年なので、もうどれだけ残っているかわからない。半分なくなっていてもおかしくない。自分も行ってみたいと思うが、どれだけ残っていることか…。