子連れ狼 親の心子の心

子連れ狼 親の心子の心」、若山富三郎山村聰、東三千ほか出演、斉藤武市監督、勝プロ、1972


この作品、若山富三郎子連れ狼の4作目。これは前三作を監督した三隅研次ではなく、斉藤武市の作品。そのせいか、血の量は少なめ。

話の内容は、萬屋錦之介主演のTV版第1シリーズの2話、欠番で放送できなくなっている「乞胸お雪」が中心になっている。これで「乞胸お雪」が欠番になっている理由がやっとわかった。「乞胸」が非人扱いの大道芸人だったから、テレビでは放送できないのだ。映画はちゃんと見られるので、やはり映画の規制はゆるいらしい。内容的にも、特別に乞胸を賎視するような描写はないので、抗議が来るようなことはないだろう。

映画の最初は、いきなり上半身裸のおねえさん(東三千)が出てきて、追手の尾張藩の侍をバッタバッタと切り倒す。しかもこのおねえさん、身体全面に彫り物が入っている。これは何なのと思っていたら、彫師は内田朝雄。東三千は、乞胸だったが、武芸を買われて尾張藩のお抱えとなった。ところが、妖術使いの岸田森に催眠術にかけられて犯されてしまう。そのまま脱藩し、藩の侍たちに追われていたというわけ。

しかし東三千は、追手の侍たちの髷だけを切って、はずかしめてから追い払う。はずかしめを受けた侍はお家断絶。拝一刀は、断絶された家の遺族から、東三千を殺すことを五百両で引き受けた。

妖術使いの岸田森があっさり殺されたり、乞胸頭の山村聰尾張藩鉄砲隊の手にかかって非業の死をとげたり、いろいろあってから、東三千も、拝一刀に切られてた。これはわりとあっさり。しかし、その後、尾張藩主の義直(小池朝雄)のところに、拝一刀が乗り込んでいって、小池朝雄を人質にとって逃げた。尾張藩はお殿様をさらわれて手も足も出ない。

ところが、柳生烈堂(遠藤太津朗)は、殿様の都合なんかお構いなしで、大人数で襲ってきた。例の乳母車に仕込んだ機関銃で対抗する拝一刀だが、敵をぜんめつさせたのはともかく、どうみても敵の刀が拝一刀の胴体に突き立っている。これは死んだのか?と思っていたら、血だらけで乳母車を押す拝一刀。なにかおかしい。

拝一刀に片腕を切り落とされた柳生烈堂の息子、軍兵衛(林与一)が、かならずお主を切るとか何とか、ぶつぶつ言っているところでおしまい。

モリモリの内容だが、詰め込みすぎで、なんだかよくわからない。キャストは、内田朝雄、林与一岸田森遠藤辰雄小池朝雄など、怪人が揃っていて楽しめる。小池朝雄なんか、殿様のくせに乱戦の中で犬死。岸田森の妖術もおもしろかったが。このシリーズは豪華駅弁みたいなもので、なんでもありなのがいいところだから、話がわけわからなくても、まあいいか。脚本はあいかわらず小池一夫だが、いいかげんこのシリーズにあきていたのかも。

この映画の中では、TV版第3シリーズの主題歌「子連れ狼」が流れている。この曲は、テレビや映画のために書かれたのではなく、もともとは劇画のために書かれていたのだ。小池一夫作詞、吉田正作曲の名曲。