超高層のあけぼの

「超高層のあけぼの」、池部良中村伸郎ほか出演、関川秀雄監督、日本技術映画社、1969


霞が関ビルの建設を描いた、半分ドキュメンタリー、半分ドラマという映画。出演者リストは、豪華なもので、池部良木村功丹波哲郎平幹二朗佐久間良子新珠三千代田村正和藤井まゆみ佐野周二中村伸郎根上淳丹阿弥谷津子、三宅邦、北林谷栄、花柳喜章、菅井一郎、内田朝雄、小林昭二鈴木瑞穂、南廣、柳永二郎松本幸四郎(八世)、渡辺文雄伴淳三郎などなど。

クレジットの最初に、三井不動産の江戸英雄と、東大建築学科の武藤清に対する賛辞が出てくる。この映画は、施工者の鹿島建設の肝いりで作られたので、発注者の三井不動産と設計の中心人物である東大の先生が持ち上げられているのだ。映画の中で実名で出てくるのは、江戸英雄と、鹿島建設の会長、鹿島守之助。

霞が関ビルは、日本初の超高層ビルで、この地位はけっこう長く続いており、自分が子供の頃は高層ビルといえば霞が関ビルということになっていたので、こういう映画が作られたのも納得。この映画を見ると、ビルの耐震性が大問題で、費用、工期等々、解決しなければならない問題が山ほどあった大プロジェクトだとわかる。

群像劇なので、設計者の中村伸郎、施工の中心人物の池部良から、クレーンのオペレーター(田村正和、若い!)、工事人夫(伴淳三郎)にいたるまで、大勢の人が登場して誰が誰やらよくわからなくなる。全体で160分あり、とにかく長い。この長さなので通して見ることができず、飛び飛びで見たせいもあって、話が途中でつかめなくなる。自社の宣伝映画だから、時間の制約を気にしないで作ったのだろうが、はっきり言って退屈。

しかし、この映画の見どころはストーリーそのものよりも、建設中の霞が関ビルが、まだ鉄骨の骨組みしかないところにカメラを据えて、周囲や下の様子を映した映像にある。これより高い建築物は東京タワーだけ。このビルができた時点では百尺規制で31メートル以上のビルが建てられなかったところに、いきなり150メートルのビルができたのだから、他の建物は豆粒みたいなもの。高層ビルが当たり前になった今ではどうということはないのだが、一番最初に作るのはやはりすごい。

それに、目もくらむような高さで工事をやっている鳶職人たちが、ひょいひょいと鉄骨の上を歩いているところがすごい。このくらいの高さだと風がすごいのではないかと思うが、地面を歩く時と変わらない軽快さでスタスタ歩いている。この場面は当然役者ではなくて本物が出ているのだが、この場面だけでも一見の価値がある。