ビスマルク号を撃沈せよ

ビスマルク号を撃沈せよ!」、ケネス・モア、ダナ・ウィンターほか出演、ルイス・ギルバート監督、アメリカ、1960


映画の冒頭にいきなりビスマルク進水式。これはニュース映画から取ってきた、「本物」映像。もちろんヒトラーも出席。進水式のロープを切るのは、宰相ビスマルク本人の孫娘。

第二次大戦の海戦映画で、戦艦同士の撃ち合いがメインの映画はめずらしいが、貴重なのはそこまで。映画としておもしろいかというと、あまりおもしろくない。

基本的な理由は、映画の主役がビスマルクでもなければ、イギリス艦隊でもなく、英海軍司令部で分析をしているシェパード大佐(架空の人物)になってしまっていること。せっかくの戦艦映画で、艦自体も本物(イギリス戦艦だけど)を使っているのに、それを上手に使っていない。室内でビスマルクの行方について推理ゲームをやる映画になってしまっている。

シェパード大佐が、ドイツに個人的な怨恨を持っていたり、ビスマルク側のリュッチェンス提督が狂気のナチ軍人にされてしまっているところも、非常にがっかり。1960年にナチをかっこよく描くことは(特に実在の人物だと)いろいろとむずかしかったのかもしれないが、敵がかっこよくなくては、味方もかっこよく見えないという基本的な線を外している。

プリンス・オブ・ウェールズ、フッドとの撃ち合い、その後のH部隊との撃ち合いは当然ミニチュアだが、H部隊との撃ちあいはそれなりにカッコよく撮られている。フッド撃沈のくだりは物足りないが。最初の3斉射くらいで、ビスマルクがほぼ鉄くず化してしまうところは哀れを誘う。イギリス人はこれを見て溜飲を下げたのかもしれないが、あっという間に終わっちゃうのは消化不良。

その前に「トラ!トラ!トラ!」をちらっと見てしまっていて、日米双方の登場人物がみなキャラ立ちしているのを見ているだけに、こちらの出来はざんねん。同じ英独海戦ものでも、「戦艦シュペー号の最後」のほうがずっとよかった。素材はいいのに、もったいない。