本の神様

「本の神様」、「2012ベストセラー総まくり」、NHKBSプレミアム、2012.12.31


NHKのBSでやっていた、ベストセラー本紹介番組。出演者は、室井滋夢枕獏齋藤孝小橋めぐみ。内容もさりながら、小橋めぐみ目当てで見たようなもの。しかし、内容もけっこうお得感が強かった。

ベストセラーは、総合、文芸、ライトノベル、ビジネス、絵本、電子書籍、文庫、に分けられていて、文芸、ビジネス、文庫、のところでは、それぞれの分野に詳しいゲスト(批評家や書店員など)が来て、内容を紹介する。

この出演者4人だが、夢枕獏齋藤孝は、まあそれなりに本を読んではいるが、それも分野限定。室井滋小橋めぐみは、文芸書とよく売れている本を読んでいる人という感じ。確かにあらゆる分野の本を読んでいる人というのはそうそういないが、もうちょっと出演者の選択というものがあるだろうという気はする。自分は小橋めぐみ目当てなので、文句を言える立場じゃないが…。

新聞のベストセラーリストをちょっと目にしているので、だいたい見当はつくのだが、本当に文芸書は売れていない。総合ベストセラーの1位は、阿川佐和子『聞く力』で、これだけがミリオンセラーだが、ベスト10に入っている文芸書は、三浦しをん舟を編む』しかないのだ。あとは、健康、医療、ダイエットとかが多く、大川隆法も入っている。そんなものだ。

文芸書では、東野圭吾とか、東川篤哉とか、ミステリーが中心。純文学は、田中慎弥『共喰い』だけ。それはそんなものか。ここでは、夢枕獏が、三浦しをんにインタビューをするビデオが挿入されていて、これはよかった。バックに映っているのは明らかに個人の書庫なのだが、三浦しをんの部屋なのか?それにしては、マンガや薄い本が一冊もなかったけど。このインタビューはおもしろくてよかった。三浦しをんがあまり前に出ない感じだったのもよかった。

ビジネス書は、『失敗の本質』が3位、しかし笑ったのは、『超入門「失敗の本質」』が1位なのだ。『失敗の本質』なんて、そんなに分厚い本でもなければ、専門的な本でもないのに、これですら解説本の方が売れている。解説本のほうが先に売れて、そのおかげでオリジナルが売れているのかも知れないが。以前ベストセラーになったのが、「もしドラ」だったから、そういうことがあるのはわかるが、そんなにお手軽に読めそうなものに食いつかなくてもいいのに…。

文庫では、ウィリアム・マクニール『世界史』が3位で、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』が4位。ゲストの中で、夢枕獏ですら、読んでいなさそうな気配(はっきり読んでいないとは言ってない)。齋藤孝は読んでいるかもしれない(はっきり読んでいるとは言っていない)。もうちょっとこの種の人文系の本を読んでいる人を呼ぼうよ。

出演者のベスト・ワンというのが最後に発表されていて、夢枕獏は、増田俊也木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』。これは渋い。齋藤孝は、永田和宏『歌に私は泣くだらう 妻・河野裕子 闘病の十年』、小橋めぐみは、ジェニファー・イーガン『ならずものがやってくる』、室井滋が、山内マリコ『ここは退屈迎えにきて』。

こういう企画だと、いつも自分が読まないジャンルで、どういう本が売れているのかがわかってよかった。「週刊ブックレビュー」、またやらないかなあ。