宇宙大怪獣ドゴラ

「宇宙大怪獣ドゴラ」、夏木陽介若林映子、ダン・ユマほか出演、本多猪四郎監督、東宝、1964


昔の怪獣図鑑には出ていたが、あまり取り上げられる機会のないこの映画。見てからその理由がわかった。この映画、怪獣はほとんどどうでもよく、ほぼ夏木陽介と、ダン・ユマという日本語の達者な外人がからんだアクション映画。ドゴラはほとんど添え物扱いだ。

夏木陽介は警視庁の刑事。「外事課」と言っているが、外事は公安じゃないの?夏木陽介は、世界で続発するダイヤモンド盗難事件の捜査担当。日本でも河津清三郎のダイヤ強盗団がいろいろと活躍しているのだが、実はダイヤ強盗団がほんとうに成功したのは1件だけで、あとは怪獣ドゴラ(炭素を食べるという設定)がダイヤを食べていましたというもの。炭素好きといったって、炭素なんか、ダイヤ以外にいっぱいあるだろう。もちろん劇中では石炭も好きなので、石炭をバンバン吸い上げるというエピソードが出てくるのだが、石炭でいいんだったら、量が少ないダイヤモンドより石炭を食べるよね。

ほとんどの話は、最初、ダイヤ泥棒の一味と思われていた怪しい外人、ダン・ユマと、夏木陽介のコントみたいなやり取りで進行。後になってからダン・ユマは、泥棒ではなく、保険会社の調査員とわかる。ダイヤ強盗団の方も、若林映子がボスの言うことを聞くようなふりをして、肝心なところでダイヤを持ち逃げしようとしたり、いろいろ入り乱れてややこしい。話のほとんどは、ダイヤをめぐる俳優たちのやりとりで終わっていて、ドゴラはちょっとしか出てこない。

ドゴラは「クラゲみたいな宇宙細胞」という設定なので、この当時の技術ではあまり絵にならないのである。自衛隊とドゴラの戦いも、何をやっているのか、よくわからない。弾丸が当たっているのかどうか、ダメージがあるのかも不明。何やらわからないうちに、強盗団が砂浜を走っているところに、空からドゴラの残骸(ほとんどペンキを塗った岩にしか見えない)が落ちてきて、強盗団はまるごとぺちゃんこになって圧死。これがオチですか?

中村伸郎の博士、藤田進の自衛隊司令、田崎潤の警察上司とか、脇役はそれなりに豪華だし、音楽は伊福部昭が書いているのでちゃんとした出来。しかし肝心のお話がピンぼけしているようでは・・・。夏木陽介も主役にしては軽すぎる。逆に日本語ペラペラのダン・ユマはいい味だしまくり。