文楽 双蝶々曲輪日記、新版歌祭文

文楽公演 「双蝶々曲輪日記」より「八幡里引窓の段」、「新版歌祭文」より「野崎村の段」、アステールプラザ中ホール、2012.3.3

また文楽地方公演の時期になり、この田舎にもちゃんと来てくれた。ありがたい。今回の地方公演は西のほうばっかりで、東京以外は三重県以東にはいかないみたいだ。

今回は幸い、太夫と三味線のすぐ前に席をとれたので、三味線の人がうなっている声とか、太夫の息継ぎとか、細かいところがいろいろと聞こえた。これはけっこう貴重。

双蝶々曲輪日記は、おはなしがおもしろかった。長五郎、逃げそうで逃げない。早く逃げろはやくはやく、と思わせておいて逃げないまま、最後に放してやるというのがいいわ。ここの語りはちょっとじわっときた。ちょっと途中でうつらうつらしてしまって、太夫と三味線には申し訳ない。

新版歌祭文は、太夫と三味線の呼吸をちょっとたのしめた感じがする。いままで文楽の公演を何度か見ていて、太夫の語りに心を動かされたことは何度かあったが、三味線はちゃんと聞けていなかった。切場の語りは嶋太夫。三味線は富助に龍爾がツレとして加わる。ここの三味線の迫力は圧倒的で、嶋太夫の渋い語りとの切り結びがすばらしい。本当に集中できた時間だった。

自分は語りの内容がそのままではわからないので、床本(これはパンフについている)と首っ引きで舞台を見ているのだが、客の多くは床本など見ないで舞台をちゃんと見ている。文楽を見に来ている人って、そんなにベテランばっかりなのか?まあ中年以降のご婦人が多いが、それなりに若い人もいる。それとも語りの細かい意味など取れなくても、舞台を見つめているほうがいいのだろうか。こういうところは自分でもまだ腹がすわっていない。