日本暴力列島 京阪神殺しの軍団

「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」、小林旭、梅宮辰夫ほか出演、山下耕作監督、東映、1975

大組織の鉄砲玉として使われる在日ヤクザを描く、朝鮮人ヤクザもの。このころはこういうテーマでも普通に映画をつくれたのか。今はDVDも出ているようだが。

大阪、鶴橋の愚連隊の頭だった小林旭はケンカ相手の梅宮辰夫がたまたま同じ朝鮮人だったことから、兄弟分になる。小林旭は親分、室田日出男が敵組織に抱き込まれたことを不満として親分を射殺。出所してからは自分の組を構えるようになる。大組織天誠会の傘下に入った小林旭は、敵対組織を抗争で壊滅させて、天誠会の直参の子分になる。武闘派集団として各地に転戦し、天誠会の勢力拡大の先兵となる。

しかし岐阜に殴り込みをかけた時に、天誠会と敵組織が勝手に手打ちをしてしまう。納得できない梅宮辰夫は狂犬のように敵組織と抗争を続け、結果、天誠会からとどめを刺されてしまう。小林旭は、天誠会の軍目付である成田三樹夫を自ら射殺、破門されてしまうのでした、というおはなし。

小林旭が梅宮辰夫と兄弟分になるくだり、小林旭が子分の伊吹吾郎から「自分を信用できないのは、自分が日本人だからなのか」とはっきり言われてしまうくだり、抗争継続を主張する梅宮辰夫の自分語り、成田三樹夫を刺殺したところで唐突にラストになるのだが、そこでのナレーション「彼はもともとすべてから破門されていたのだ」という終わり方など、朝鮮人がヤクザだということの微妙さがいろんなところでにおわされている。

とはいえ、それが映画の主題だということはなくて、目立つのは小林旭の明るいかっこよさ。やたらケンカ志向で妻を大事にしている梅宮辰夫が内向きのキャラクターになっているのと対照的に、小林旭はケンカができ、頭も切れて、クールでいて、かつ陽性というキャラクター。「仁義なき戦い」の武田とはちょっと違うが、内にこもったところがない点では共通してるかな。

キャストは、主役二人のほか、成田三樹夫室田日出男伊吹吾郎に加えて、遠藤辰雄金子信雄小松方正名和宏、安部徹らが揃っていてなかなかたのしめた。東映チャンネルを契約しているとこういう作品を拾えるのでラッキー。