大番

「大番」、加東大介淡島千景仲代達矢ほか出演、千葉泰樹監督、東宝、1957

日本映画専門chで、「加東大介特集」をやり始めたので、とりあえずこれを見てみた。昭和初期の相場師の立志伝。宇和島の田舎から無一文で出てきた加東大介が、ひょんなことから株屋の小僧になり、相場通し、サイトリ(個人で株売買の手数料をとる商売)になって、大相場を張って大金を稼ぐが、5.15事件で大張りして失敗、無一文になって帰郷するという話。

キャストはけっこう豪華で、原節子河津清三郎有島一郎東野英治郎ほかといったところ。昔の兜町の風景や取引の様子、相場に群がる人々の生態は、見ているだけでおもしろい。市場分析のようなものはなく、ひたすら経験と勘で取引していた時代の「相場師」のおはなし。まあ、博打打ちとたいしてかわらない。いちおう「証券会社」っぽい河津清三郎と、相場師のなれの果て、東野英治郎との対比もおもしろい。

兜町の風景のほか、むかしの宇和島の風景(ロケは実際にしているらしい)も見物。このあたりは段々畑ばっかりで、まだみかんの生産をやってない時代。貧しい家はイモしか食べられなかったようすがよく描かれている。

この話は、四部作の第1作。当たるかどうかもわからないのに、よく作れたと思う。しかし加東大介は、非常に魅力的。上手いし、存在感は抜群。母親役で沢村貞子がちょっと出ていて、姉弟共演になっている。次作、「続大番 風雲編」がたのしみ。