謀議

「謀議」、ケネス・ブラナースタンリー・トゥッチほか出演、フランク・ピアソン監督、アメリカ、イギリス、2001

ユダヤ人問題の最終的解決」を決めたヴァンゼー会議の模様を描くHBOのテレビムービー。ほとんどは会議の様子をそのまま映す会話劇。議長でRSHA長官のハイドリヒを演じるのはケネス・ブラナー。実物よりちょっと年を食っている感じだが、切れ者で政治力も十分、反対意見の持ち主は休憩時間に呼び出して、脅しをかけて黙らせる。会議を予定通り、2時間で終わらせて自分の腹案通りの結論でまとめてしまう。なかなかの好演である。

会議の出席者は各省や関係機関の次官や課長クラスだが、粗野な者、法律一筋の頑固者、くだらない冗談(まあ、あまり笑える冗談ではない)を飛ばす者、いろいろいる。服装の多様さ(親衛隊、ナチ党は制服、内閣は背広)もあって、それぞれの出席者のキャラクターをうまく描き分けている。ヴァンゼー会議の速記録などはないのだから、結論以外はどうとでも書けるわけだが、真偽はともかく、演劇としては成功していると思う。これは舞台劇にしても、十分いけそうな感じ。

最後は出席者のその後がひとりひとりテロップで説明されて終わるが、戦死や処刑された者はそれほど多くなく、むしろ裁判で無罪になったり、収監されても釈放されて長生きした者が多いことが目を引く。この結末の描き方も皮肉がきいていてよい。

ロケは現在も残っている本物のヴァンゼー荘を使っている。きちんとつくりこまれた劇という印象。