ビルマの竪琴(1956映画版)
「ビルマの竪琴」、安井昌二、三國連太郎ほか出演、市川崑監督、日活、1956
名作と言われている映画だが、この映画だけ見ると、「これがそんなに名作なのか」と疑問に思う。というのは、この映画では、なぜ水島一等兵が僧になり、部隊に戻ることを拒んだのかということが説明されていないから。
原作の小説には、水島一等兵が三角山の部隊を説得に行った後、僧になった間のことが、神秘的なエピソードつきで書いてあるので、理由は明確。しかしこの映画はその部分をかなり書き換えていて、水島一等兵が僧になってから遺体だらけの道を歩くことになっている。悲惨な光景を見てから僧になったのでないと、つじつまがあわないと思うが。
この映画をリアルタイムで見ていた人には、ビルマ戦線がどれだけ悲惨だったかは既知のことなので、そこは描写しなくてもわかったのだろう。
とはいえ、最後に三國連太郎が帰国船の中で水島一等兵の手紙を読むところは、かなり感動的。小隊長は、水島一等兵が生きていて、部隊を見守っていることを知っていて最後まで、そのことをのみこんでいたという話になっている。これはこれでいいのか。