NHKスペシャル "武器輸出"防衛装備移転の現場から

NHKスペシャル "武器輸出"防衛装備移転の現場から」、2014.10.5


武器輸出三原則の見直しについてのドキュメンタリー。しかし、肝心な話が抜けているわりに、瑣末な話ばかりで、NHKのわかってなさが際立つ作品に…。

日本が、武器の見本市「ユーロサトリ2014」に出展して、フランスと武器開発の協議をしているという話が最初に来る。

次は、武器輸出三原則のできた経緯。カッパロケットがユーゴスラビアインドネシアでミサイル転用されたために、三原則ができました。イスラム革命直後のイランも日本に、電子部品やタイヤ(軍用機部品)を緊急輸出してくれるように依頼してきていたというおはなしも。そりゃ、輸出は断るでしょう。F-4の部品なんだから、アメリカのパテントがからんでいるんだし。当時の通産省関係者が出てきて、「武器輸出三原則があったから断れた」と言っている。そんなの関係ないんじゃないの?

アメリカからも技術供与の要請があったが、それは鈴木首相の判断で断ったと通産省の人は言っている。しかし、これが具体的にどういう技術だったのかについては言及なし。

新しい防衛装備移転三原則で、パトリオットPAC3のジャイロと、イギリスとのミサイル共同開発が決まったというおはなしがその次。PAC3は、アメリカから第三国に再輸出されるが、再輸出には日本の事前同意がなくてもいいことになっているので、紛争に使われ可能性があると煽っているが、それはあたりまえ…。ケビン・メアを出してきて、PAC3カタール以外にイスラエルやら、台湾やらに輸出される可能性もあると言っている。それもあたりまえ…。

長野県のコイル製作メーカー(セルコ)が、自社の部品が「とんでもないところで使われないか、心配している」というVが映った。そんなことをいちいち社員と相談しているのかい。結局武器に使われるのは嫌なので、海外の軍に使われる場合は断ると言っている。

NHKの人が、「部品が戦闘行為に使われる可能性が否定できないのでは?」と聞いているが、防衛省の課長は、「それは武器なんだし」という当然のお答え。というか、NHKは、今まで日本製の汎用品が武器として使われていたことは知らないの?ベトナム戦争の時から、ソニー製のカメラが、爆弾の誘導用に使われていたりしたし、トヨタのピックアップは、機関銃を乗せて活躍してますが。

レンズメーカーが民生品ということにしてレンズを輸出しているが、最終用途が民需か軍需かは知らないと言っている。で、アメリカの仲介業者は、日本製のレンズをどこにでも売っていますよと言っている。高性能レンズの目的は無人機の搭載カメラなどに使われるが、具体的な用途は秘密なので言えませんという。とはいえ、イラクで傷がついたり、中国にも売っていますというはなし。

武器移転については、ASEANとも話をしているという話でおわり。

この番組、F-35問題とか、国際共同開発がなぜ必要だということになっているかとか、この問題の背景には何も触れていない。民生品の軍用移転は、三原則の変更以前からあったことだし。ピントがズレているし、ボケている。NHKもトンデモでしたというはなし。